仙台高等裁判所 昭和25年(う)997号 判決
刑事訴訟法第二百三条にいわゆる司法警察員より検察官への送致というのは、被疑者の身体拘束の時から四十八時間以内に被疑者の身柄を送致するだけでなく事件そのものも検察官に送致すべきであつて、この意味で本条は、同法第二百四十六条の例外規定をなすものと解すべきであるから、右送致後右司法警察員が固有の捜査権に基ずいて前記供述調書を作成したものであるならば、右供述調書の作成は違法なものと言わねばならない。しかし、一方、検察官は必要と認めるときは自ら犯罪を捜査することができるのであつて、この場合必要があるときは司法警察職員を指揮して捜査の補助をさせることができるから(刑事訴訟法第百九十一条第一項、第百九十三条第三項)、事件送致後と雖も司法警察員は検察官の指揮下にある補助機関としてならば、被疑者の供述を録取して供述調書を作成することも許されるのであつて、もし、本件の前記供述調書がかかる経過において作成されたものであるなら、もとより違法なものでないのである。そして本件の如き司法警察員作成の被告人供述調書が、前記のように検察官の具体的指揮に基いて作成されたものかどうかは、必ずしも記録上これを明らかにしておく必要はないのであるが、今、検察官検事山口一夫の秋斗炫に対する窃盜被疑事件に関する捜査指揮の有無に付回答と題する書面によると、前記の司法警察員宗川常夫作成に係る秋斗炫の供述調書は同検事が福島地方検察庁若松支部検事として在職中右司法警察員宗川常夫に対し刑事訴訟法第百九十三条第三項に基き若松刑務所在監中の秋斗炫の取調方を指揮し取調をなさしめた際に作成されたものであることが明らかであるから、これが適法のものであることは前段説明のとうりであり、右供述が任意にされたものでない疑は記録のどこにも見出されないから、これを事実認定の証拠に引用したからと言つて、原判決には所論のような違法は少しもない。
(後略)